「悪魔」と呼ばれた男

あの日、僕は「悪魔」と呼ばれた。
それはベッドの中で、お互いが横になって向き合っていて、彼女の口調が愛らしかったか、冗談めいた感じだったか、瞳が潤んでいたか、はっきりは覚えていないけれど、「悪魔」という二文字が、僕の頭に飛んできたのは覚えている。

「変わった人ね」
「面白い人ね」
「素直な人ね」
「ずるい人ね」

こんな場面で、よく掛けられる言葉っていうのがあるのだけれど、その言葉を別の言葉に言い換えると「憎めない人ね」であれば嬉しいなぁ、といつも思う。

男女の関係って、お互いの間にひとつの感情だけを共有できることなんてなくて、与えた優しさの中にはトゲが生えていたり、放った矢の先には薬が塗られていたりと、真実の中に嘘が含まれていたり、嘘の中に真実が含まれていたりする。
そして、それは当の本人がどう受け止めるか次第。

だから、自分のしたことが100%正しいことも100%間違っていることもなくて、「ありがとう」って言葉は嘘っぽい。
そう、「憎めない人」くらいが本当っぽい。

逆に、僕が掛ける言葉はいつも大体決まっていて、

「可愛いひとだね」

それ以外は、嘘っぽい。

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