彼女はもう、ここには居ない

部屋に戻ってくると、彼女が帰りがけにつけた香水の匂いが残っている。
冷蔵庫を開けると、飲みかけのペットボトルが残っている。

あの子はもう、ここには居ないという現在と、あの子は今までここにいたという過去の、そのふたつの真実がともにやってきて、夢とうつつに混乱した脳を整頓させようと、タバコに火をつける。

火をつければ、またマッチ売りの少女のように、そこに二人で過ごした幻影が現れて、何をしてもそれの繰り返し。

寂しがり屋は、友達や恋人を家に招いてはいけないと思う。

賑やかな時は過ぎ去るくせに、空間は変わらず存在しているのだから。
やがてやってくる孤独に耐えられなくなってしまうのだ。

そんなこと、過去にもどこかであったなぁ。

空間は常に絶対的で、時間は常に歪んでいる。
そして、その歪みは自分が作っているのだと。

そうそう、音楽もいつも絶対的だけれど、心は常に歪むものだ。

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